主婦としてのキー・リソースを生かしたパーソナル・ビジネスモデル|日経新聞連載の「Wの未来」から
(この記事は2013年10月9日投稿)
日経新聞で今週から連載開始の「Wの未来」は個人のビジネスモデルを考える上で大変興味深い内容ですね。(カバーストーリづくりの題材にもなります)
7日付の記事は、「私もサロネーズ 主婦力が開く新市場」として活躍している3人の主婦を紹介しています。
さて、この記事に登場する一人、仲村美香(39)のパーソナル・ビジネスモデル(住まいの収納術伝授のサロネーズ)を記事内容からキャンバスに落としこんでみました。
「キー・リソース」と「キー・アクティビティ」と「顧客」がしっかり結び付けれているのがわかります。互いに認め合う絆の太さや強さは、「与える価値」の顧客の評価によって決まってきます。
キー・リソースは顧客のために尽くし、役に立つ具体的なキー・アクティビティをもたらします。その活動が継続され、深まるほど与える価値がさらに増幅されてきます。
このような強力なパーソナル・ビジネスモデルの源泉はどこにあるのでしょうか。
連載を記事を読むと、主婦としての役割を果たしているなかで、自分の「好き」「興味」「関心」のある事柄が起爆剤になっているようです。
それは、住まいの収納術、料理、我が子のポートレートの撮り方であったりです。
主婦が主婦のために、生活に直結する「楽しみ」「快適さ」などを生活で得たノウハウを磨き上げて、教えているわけです。
主婦同士、共感が口コミを呼び、ブログなどのアクセス数が増え、出版社が書籍化して、好循環を招いているようです。記事にあるように、なかには収入が会社勤めのときを越え、テレビ出演までしている方もいます。
記事の最後では次のように締めくくっています。
料理や手芸にとどまらずライフスタイルや暮らしを彩る提案まで、家庭にこそ宝の山がある。主婦力を生かして社会に羽ばたく女性たち。その潜在力に共感し支持する主婦らもまた、同じように羽ばたく可能性を秘めている。そこに新たな市場が広がっている。
8日付の記事で私が注目したのは、彼女たちの動機です。医師と弁護士、中央省庁の女性キャリアを取り上げています。
WHO(世界保健機関)のメディカルオフィサー(外交特権を持つ専門職の頂点)を務める女性医師と、特許訴訟に取り組む女性弁護士の動機は?
・高校時代、弟を脳腫瘍で亡くし、医師を志した。当初は外科医だったが「国際的に活躍でき、子どもたちとの時間も持てる場所」を求めて国立感染症研究所に転身。2002年にWHOに派遣され、重症急性呼吸器症候群(SARS)や鳥インフルの大流行に遭い、情報を集め各国からの問い合わせに分単位で対応する経験を積んだ。(進藤奈邦子・50)
・両親が裁判で負けて家を失ったことなどを見聞きし「自分が信じることを貫くには戦うすべを身につけないと」と感じて育った。法律知識を武器に選び、大学3年の時に日本の司法試験に当時最年少で合格。(矢嶋雅子・44)
体験発表とキャンバスのキー・リソース
体験したこと、経験したことが、その人ならではの「ひとつの道」を指し示しています。
よく「経験は財産」と言われます。自分を形作っている大切な要素です。
キー・リソースは私たち自身そのものであることを再認識しました。他にはないという当たり前ことを失念しがちです。あなたのキー・リソースは自分の外や周囲にはない。
自分をしっかり見つめることのポイントはここにあったのですね。
よく自己紹介の場面に遭遇します。名前・勤務先・やっている仕事・出身地などのほかに、ちょっとした体験話をされる方もいます。妙に印象深かったりします。
あなたの現在のパーソナルビジネスモデル・キャンバスは、あなた自身の体験発表の場のような気もします。
キー・リソースとして、資格について次のように書いています。
資格や知識といった武器を手にすれば、性別に関係なく、どこまでも闘える。
「一寸先は光」、もう一つの人生へ新たな飛躍を
専業主婦には、主婦ゆえの着想や発想による潜在力があります。
日経新聞10月13日14版一面の「Wの未来」シリーズ連載の記事からそのことがよくわかります。
三人の女性を取り上げています。
どんな女性たちか記事内容を見てみよう。
一人は、「カリスマ駅弁販売員」の三浦由紀江さん(59)。
- 日本レストランエンタプライズ(東京・港)上の営業所次長。
- 23年間の専業主婦のあと、44歳からパート。
- 上野駅販売店で、一年間で3千万円増やす。
- 弁当は全て味を確かめた上で助言して販売。
リピート客の反応も嬉しい。仕入れも任されるようになる。
- 大学在学中に結婚、3人の子育て。
三浦さんは、「専業主婦を楽しんだ後、別の人生を楽しめる」という。
二人目は、岸田真由子(41)さん、変圧器の輸入販売会社ワンゲイン株式会社(大阪市)の新規ビジネスで、災害時などに使う家庭用蓄電池を販売している。
- 子供が小学生になり、時間の余裕ができた。
関西学院大学の再就職講座を半年間受講後、就職。
- 採用された半年後に、新規事業の社内公募で案を出した。
- 大型の蓄電池を片手で扱えるようにキャスターと取っ手をつけた。
「緊急時は子供と手をつなぐために片手はあけておきたい」
主婦ゆえの着想。 - 実力が認められ、営業統括部長に抜擢され、海外出張も任される。
会社のトップは、「新卒生を集めづらい中小企業に主婦は宝の山だ」という。
最後は、石崎芙美子(47)さんだ。41歳で社会保険労務士になり、9月上旬に事務所を開いた。
- 「働きやすい病院づくりコンサルタント」医師や看護師が過労に陥らない環境づくりを目指す。
- 短大卒業後に就職、20歳で結婚、二人の息子は大学生。
- 「家庭での役割が一段落したら社会に役立つ仕事をしたい」と思うようになった。
- 日中はパート、夜は家事。深夜の3時間、食卓で勉強。
- 資格取得後、大学病院で女性医師の復職プログラムを手伝う。
医療現場のワークライフバランスを多くの病院に広げたいと開業を決意。
作家の桐衣朝子(62)は色紙に「一寸先は光」と書く。
- 35年の専業主婦生活後、昨年の小学館文庫小説賞を「薔薇とビスケット」で受賞、デビュー。
- ・乳がんを患い、「このまま専業主婦として人生を終えたくない」と書いた作品。
桐衣さんは、「頑張っても実現できないこともある。でも頑張らないと何も始まらない」という。
一寸先は光!
記事内容を次のような図にしてみました。
さて、記事中に、「いつからでも遅すぎることはない。専業主婦の潜在力を家庭外で生かそうという、子育てが一段落した世代の雇用者は増えている」とあります。
何かを始める時に、つい考えこむときがあります。物思いにふけり、考えても何も始まらない。
専業主婦にかぎらず、何かを始めるタイミングに、いつからでも遅すぎることはない。大事なのは、いままでの自分にまとわりついている固定観念とを振り払うことと、最初の一歩を踏み出す勇気だけだ。
踏み出せば、一寸先は光だ。決して闇ではない。
懸命に頑張って働く仕事の姿は、誰かがじっと見ている、誰かの目に留まる。
パートやアルバイトだから、余計によく見られています。上司や雇い主は、仕事を任せたい人を必死に探しています。
自分の「経験や培ってきたもの(キー・リソース)」をしっかり見つめて、のびのびと大胆に、弾ける明るさで、仕事に取り組もう。